ヨーロッパのパスポートを持つ家禽
09 / 11
2020

欧州産 収穫の秋と聖マルティヌスの日

欧州産 収穫の秋と聖マルティヌスの日

ガチョウは環境に敏感なため、飼育期間は季節に限定されます。ヨーロッパではガチョウの新鮮な肉を入手できるのは11月から12月にかけてのみです。それ以外の期間は、冷凍肉のみが手に入ります。これが、収穫を祝う聖マルティヌスの日に食すガチョウが一番美味しいと言われる所以です。

古くから、ガチョウの屠殺は、聖マルティヌスの日である11月11日を目安に始められてきました。これは、野生の雁からガチョウへの家畜化がまだ完全には進んでいないため、両者の産卵時期が似通っているからです。ガチョウは春に産卵します。卵からかえった雛はその年の秋に成鳥となります。

 

聖マルティヌスの日は、ポーランドを含め、ヨーロッパ各地で数世紀にわたって受け継がれてきた伝統です。ごく普通にヨーロッパの庭先で鳥が飼われていた頃は、秋一番のガチョウ肉で収穫を祝うものとされてきました。今日、お祭りでも、レストランでも、家庭でも、ガチョウ肉は秋のお祝いの席や家族の集いを飾る主役です。普段からよく食べられている鳥肉や七面鳥と比べ、ガチョウ肉は入手が難しく、やや高価であり、脂身が多く、焼くのに時間がかかるため、大切なお祝いの席でのみ登場します。

ガチョウは、閉鎖的な環境に耐えられないため、大半は草地で放し飼いされる必要があります。飼料を与えられるのは、秋から冬にかけてのみです。このような飼育法により、美味しい肉のみならず、布団、枕、コート、寝袋の詰め物に適した軽く断熱性に優れた羽根や羽毛を採取することができるのです。ガチョウの羽毛を詰めた製品は、合成素材を詰めたものよりも軽く暖かいため、高い等級に区分されています。

EU加盟国は日本に向けて、2019年には644トンの羽根と羽毛を輸出しました。輸出額は合計で4,620 万ユーロにのぼり、その上位を占めたのは、ハンガリー、ポーランド、そしてドイツでした[1]。 欧州産の羽根と羽毛の主要輸出先は、日本のほか、中国、台湾、米国などです。日本では、欧州産の羽根と羽毛のほうが、欧州産鳥肉よりも格段に需要が高い状況です。

そうはいっても日本は、2019年に総額で130万ユーロにのぼるEU産ガチョウ肉を48トン輸入しています。この輸入量を上回ったのは、世界でも香港(2750トン、総額1,002万ユーロ)とイスラエル(1,500トン、総額2,010万ユーロ)だけでした[2]

本場のレシピを試して、収穫の秋と聖マルティヌスの日を一緒にお祝いしましょう!

[1] https://madb.europa.eu/madb/statistical_form.htm CNコード:050510

[2] https://madb.europa.eu/madb/statistical_form.htm CNコード:020755